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更新日:2016年4月1日

“鉄の惑星”をつくりだす、新しい鉄工所のイメージ

鉄の惑星が作り出す、新しい鉄工所のイメージ

会社を伸ばすために、必要なことは何かと考えた

坂井平野のやや南寄りに位置する坂井市春江町西長田。田園地帯が広がるこの地にその工場はあります。
『株式会社長田工業所』。
工場入口のシャッターでは、セキュリティ犬の“ポッチ”がお出迎えしてくれます。ところでこの会社名、『ながた』それとも『おさだ』のどちらなのでしょう。

「社名の読み方は『おさだ』です。25年前に父が創業した際、県内にすでにながたという鉄工所があったことと、地区にある長田(おさだ)神社の名にあやかってということで、『長田(おさだ)工業所』としたと聞いています」

そう答えるのは、二代目の代表取締役である小林輝之さんです。なんでも長田神社は、越前から出た天皇として知られる継体天皇の伝説があるとのことです。
さて、長田工業所では、どのようなお仕事をしているのでしょうか。

「テクノポート福井にある製造会社さんの工場内のプラント設備や建築金物の製造・取付などが主な仕事ですね。工場の生産性の向上や、安全対策のための設備を一から手掛けることが多いですね」

創業から工場内のリフォームという専門性を活かした業務を展開してきた長田工業所。しかし、小林さんが社長に就任した4年前から、それまでとは違う取り組みを始めることになります。

「大きく分けると三つあります。一つめは売上の規模を伸ばすこと、二つめは社会的な信用を高めること、三つめが自社製品の開発です。これらは社員が活躍し、会社の伸びしろを大きくするための取り組みです。他の会社も頑張っているなかで、自分たちも何かやらなければ、存在していくことはできませんから。」

その活動のなかから『アイアン・プラネット』という鉄工所を鉄のテーマパークとするプロジェクトが生まれました。

お話になる小林社長

10歳の頃の記憶から生まれたアイアン・プラネット

鉄工所といえば、物々しい工作機械が立ち並び、ゴツい鉄の部材が所狭しと置かれ、作業服にヘルメット姿で黙々と作業する職人さんを誰もがイメージすると思います。いかにも『関係者以外立入禁止』の看板の似合う環境です。しかし、小林さんは思わぬ言葉を口にします。

「アイアン・プラネットのコンセプトは、『一般の人に鉄工所の中に入ってもらうこと』でした」

一般の人と鉄工所。結びつきにくいもののように思えますが、そこにこそ小林さんのアイデアがありました。

「発想の元にあったのは、自社製品の開発でした。何をつくるかを考えることは、自分が本当にやりたいことは何かを考えることです。それを考えたときに思い出したのが自分の10歳の頃の記憶でした。当時、父親の工場で溶接機に触らせてもらったんですね。それがすごく楽しいこととしてずっと記憶にありました。ということは、今の人たちもそういう体験をすれば、同じように溶接や鉄工所に楽しさや夢を感じてもらえるのではないかと考えたのです」

もちろん、このような取り組みはいきなり相談しても、会長である父親や他の社員に受け入れてもらえるか心配だった小林さんは、少しずつ理解してもらうためのある作戦を取りました。最初は、『溶接体験教室』を開いて、知り合いに溶接を教えてほしいと会長に頼んだのです。同時にマスコミに取材を依頼、新聞に掲載してもらいました。

「徐々に周りの理解を得られるようにしました。また、資金的な部分では、クラウドファンディングというネットを通じて支援してくれる人から資金を集める方法に挑戦。これは福井県でも初めての試みだったそうですが、見事、資金の確保にも成功し、工場内の2Fスペースを改造する費用などを捻出しています」

アイアン・プラネットでは、溶接の体験を通じてスツールやネームプレートなどの製品を自分でつくることができます。子どもから大人までの幅広い方々が参加できる、まさに遊んで学べる、鉄のテーマパークです。
2015年6月から活動を開始し、2016年3月までの期間で参加者は約100人にのぼるとのことです。

アイアンプラネットの体験風景

ものづくりを活性化するコトづくりの視点と発想

これまで誰も思いつかなかった、『鉄工所』と『テーマパーク』の融合を果たした小林さんですが、その独自の視点はどこから生まれたのでしょう。

「この会社に入ったのは9年前ですが、それまでは飲食関係の会社に勤めていました。そこでは売上目標に対し、どのようにトライし、どのような結果だったかという一連のマネジメント業務に携わっていました。そこで培った仕事の見方は今も生きているかもしれませんね」

鉄工所の跡を継ぐためとはいえ、未経験の職場への転職でご苦労もさぞやだったと思います。

「鉄工に関する技術が何もないところからのスタートでしたね。そこから先輩の職人さんに指導を受けたり、現場を経験して、入社5年でボイラー溶接士や建築施工管理技士などの国家資格を取ることができました」

経営的なマネジメントの力と、溶接などの専門技術の力。その両方を持つことができたからこそのアイアン・プラネットだったのかもしれません。

「自社製品の開発と販売は必ず果たしたい夢です。今も県内の大学と産学連携で製品づくりを進めています。ただ、ものづくりに関しては、私個人はやはり力不足であることも確かです。県内のある鉄工所さんにかつて製品づくりの相談をしていた時に気がつきました。ものづくりという点で、私は本職の方にはかなわないのだと。であれば、自分はコトをつくろうと考えたのです」

冷静に自分の状況を客観視し、活路を見出す小林さん。これまでの活動を見ても、『鉄工所の価値観を覆す風雲児』といえるのではないでしょうか。

「この工場にしかできない技術や商品があれば、楽なんですけどね。いくら考えてもないんですよ。だからこその『コトづくり』という独自化が必要かなと思います」

実は、すでに新たなコトづくりを小林さんは始めています。『かっこいい鉄工所のユニフォームづくり』もそのひとつ。

「なかなか若い方が入ってこない業界ですし、少しでも憧れてもらえるためにはどうすればいいかを考えました。コンペ形式で集めたデザインをいずれ形にして、販売できればいいなと思います。これは商売というよりも鉄工所全体のブランディングに少しでも貢献できるならと考えてのことなのです」

この町でみんなと協調して、鉄工所の可能性を広げたい

新しい鉄工所の在り方を模索する毎日で忙しいはずの小林さんですが、地域との関係も大切にしています。お子さんの小学校のPTA会長を務めたり、坂井市商工会青年部の活動に参加したり、坂井市の交通指導員までも引き受ける多忙ぶりです。

「『坂井市に長田工業所がないと困る』というほどの存在になりたいですよね。そのためには周りの方々との協調は欠かせません。皆さんとの交流から生まれたこともいくつもあります。これからも鉄工所の面白さやワクワク感をわかりやすい形で発信して、鉄工所の可能性を広げていきたいですね」

同時に「職人さんを輝かせたい」と語る小林さん。坂井市春江町から、新しい形の鉄工所がつくりだす、オリジナルの製品がお目見えする日も、そう遠い日のことではなさそうです。

小林社長の溶接風景


【パーソナルデータ】

小林 輝之さん(こばやし てるゆき)
40歳
株式会社長田工業所 代表取締役
坂井市春江町在住

株式会社長田工業所
〒919-0404 坂井市春江町西長田41-1-1 電話番号0776-72-1164
長田工業所ホームページhttp://osadaindustry.web.fc2.com/index.html(外部サイトへリンク)
IRON PLANETホームページhttp://iron-planet.net/(外部サイトへリンク)